やる気スイッチからのご提案
「念のために調べる」ことで、正確さの大切さを教える こちらが知っていることでも「……だと思うけれど、せっかく尋ねてくれたのに、間違いを教えてはいけないからね」「……と思うけれど、念のために調べてみよう」などと言って、辞典を引いたり、関係の本で調べたりする親の姿を見ていれば、子どもは「知識や認識は正確でなければならない」ということを、自然に学ぶはずです。
学年が上になってくるにしたがって、不正確な知識は知識として意味をなさなくなります。
自分でまあまあ正しいと思っても、正確さを確認するという価値観を身につけるのには時間がかかります。
年少の頃から、このようなことが日常になっていることの恩恵は子どもにとっては重いのです。
漢和辞典を使って総画数で漢字を引く場合でも、一画違えば、調べたい漢字は見つかりません。
そうすると、画数を慎重に数えるということが自然に身につきます。
正確さを重く見る価値観を身につけることが重要なのです。
中学受験などを迎えると、漢字の書き取りでも、はねるところをはねない、つきぬけるところをつきぬけないなどは、すべて減点になります。
それが頭ではわかっていても、なかなか徹底できない子どもが結構多いのです。
物事は正確でなければならないという価値観が十分身についていないことによるところが大きいのです。
テレビなどを見ていて、ほんとうはどうだったかなどということが話題になることがあります。
たとえば「相殺」の読みは「そうさつ」か「そうさい」かとか、鯨はほ乳類だが、鮫はどうだったかというような、たわいもないことです。
そういうとき、だいたい、国語辞典か広辞苑でとりあえず決着をつけることが多いですが、調べてみる前に、「どちらだと思う?」と子ともに尋ねてみるとよいかも知れません。
「わからない」という答えだったら、「わからなくても、どちらかいったん決めなければ駄目だよ」と主張して、どちらかに決めさせるのです。
どちらかに決めたら念のため「間違っていてもいいけれど、どうしてそっちだと思った?」と尋ねておきます。
そのうえで調べてみるのです。
このように、ゲームのようにして調べものをしてみると、ひとつひとつが子どもの印象に強く刻み込まれます。
またわからなくなったときに、誰と誰がほ乳類のほうに賭けたなどという周辺事象が手がかりになって思い出しやすくなることもあります。
このようなことが、調べることに抵抗の少ない価値観のもとになっていくのではないでしょうか。
このようなやり方は、親としては、少し面倒な手続きになります。
けれども、勉強好きな子どもは、その種のことを面倒がらない子どもです。
そういう価値観は、まず親に面倒がらない姿勢がないと子どもには生まれにくいものなのです。
インターネットは小さなときから慣れさせるという意味で、ちょっとした調べごとをインターネットでしているときに横からかせてあげることは意味が大きいと思います。
子どもと観る映画の上映時間を調べるとか、子どもにねだられて購入を検討しているものについて調べるとか、親たちは、日常的に気軽にインターネットを使っていますが、多くは子どもの見ていないところでパッパッとしてしまいます。
私たちはもう慣れてしまってインターネットもそう新鮮に感じませんが、はじめて接した頃はずいぶん新鮮に感じたものです。
インターネットは、そこで調べものをすることじたい楽しいのですから、早いうちに子どもにも味わわせてあげるのがいいと思います。
事情が許せば、子どもにパソコンひとつ、インターネットのアカウントひとつを与えるというのもいいかも知れません。
大人が買い換えたときにお古のコンピュータをまわしてあげてもいいでしょう。
インターネットは、子どもの変化のスピードを引き上げるという機能をもっています。
知的な関心のほうに変化しつつある子どもには、その方向への成長を早めますが、逸脱行動のほうへ移行しつつある子どもの場合にも、その方向への変化を早めてしまいます。
その点、子どもの現状を正確に認識しておくことが前提となります。
調べる習慣を子どもにつけてあげるということを、たんに勉強のための小手先の技術のように考えないでいただきたいものです。
調べる習慣を身につけることは、大げさに言うと、人格的なメリットがいくつかあります。
そのひとつが、効力感が身につくということです。
効力感は、自分の力で自分の環境に働きかけることができるという感覚です。
疑問に思ってもその答えがうやむやなままわからないという経験を積み重ねていくと、この効力感が低くなってきます。
辞書や本の索引や百科事典などを使って、どんな疑問にもたいていは対処できると考えれば、効力感を高く維持できます。
その効力感が、努力する人間、努力が報われると考える楽観性などの基礎です。
やる気を長期間保つのは効力感の作用です。
勉強だけでなく、スポーツや、それから対人関係での努力にじっくり取り組む大人になるためにも、高い効力感が有益なのです。
ものを調べるという態度は、大人になったときにいちばん必要な態度です。
大人になると、自分の勤務先の休暇の取り方を調べたり、入手しにくいチケットの入手先を調べたりと、ものを調べる必要性がコンスタントに生じてきます。
少し調べるのを面倒がったために、自分の本来の希望とは若干違うところに就職してしまったとか、もらえるはずの保険金をもらい損なった、などというようなことはいくらでも起こります。
調べものに積極的かどうかで、人生の質がずいぶん違ってきます。
ですから、いま、目の前のわからない熟語の意味を調べればそれでよいという態度ではなく、調べものに取り組むことが大切という価値観を、目の前の熟語を調べる積極性によって養うという気持ちで、子どもに接してあげていただきたいのです。
親がどういう 構えで「調べなさい」と言っているかを、いろいろな、微妙な手がかりからいつの間にか子どもは読みとっているものだからです。
調べる習慣を身につけることは、読書の習慣を身につけることのつぎくらいに大切なことです。
調べる習慣があるかないかで、大げさに言えば、人生観が違ってきます。
なぜなら、「調べる」ことは「諦めない」ことだからです。
学力だけでなく、その子どもの物事への構えを作っていきます。
自分で調べてわかることと、大人や兄姉に尋ねてわかることでは、前者のほうが尊いのです。
自分で調べてわかれば、依存心をもたずにすむからです。
大人に尋ねて簡単に納得してしまう習慣があると、自分の知識の正確さを評価するという習慣が身につかなくなります。
大人に教わったことでも、間違っているかも知れないと思う慎重さが大切なのです。
いろいろなことを自力で調べられる、調べなければならない、という感覚は、効力感と自尊心を生みます。
ひいては、それが個の強さのもとになるのです。
私たちは、日常的に新聞や週刊誌を読んでいるときでも、大小さまざまな疑問が頭に浮かんでいます。
それらの疑問の大部分は、一瞬のうちに脳裏に浮かび、次の瞬間には、忘れています。
「ああ、あの本を見れば調べられるかも知れない」と調べる手段・方法が具体的に浮かんだ疑問だけが頭の片隅に残っているのです。
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